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みんなの肝臓
超音波診断で、なぜ肝臓に“がん”があるかわかるの?

肝がんの種類

質問に答える前に、まず、肝がんについて整理してみましょう。肝がんには転移性肝がんと原発性肝がんがあります。

転移性肝がん
肝臓以外の部位にできたがん細胞が、血流に乗って肝臓へ運ばれ、そこで生着し増殖したがんです。とくに消化器系のがんからのことが多いようです。
原発性肝がん
肝臓の細胞ががん化する場合で、過去にウイルス性慢性肝炎非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などの病歴があって、長年の後に発生することがあります。自覚症状がなく、健康診断で初めてわかることもあります。
転移性肝がん

転移性肝がん

原発性肝がん

原発性肝がん

超音波による肝がんの診断

超音波検査肝がんの診断技術は、近年著しく進歩しました。なかでも超音波による診断は簡単で患者さんに痛みを与えないので、広く使用されています。特に2007年に新しい超音波造影剤が登場してからは、肝がんの診断はより容易になりました。この新しい超音波造影剤を使った肝がんの診断について詳しく説明します。

マイクロバブルの造影剤による肝がんの診断

マイクロバブル造影剤の構造

新しい超音波造影剤は、リン脂質の皮膜の中に、ペルフルブタン(安定化剤)と空気を閉じ込めて作った直径2-3μmの極小の粒(マイクロバブル)でできています。 この造影剤を水と混ぜて静脈から注射して体外から超音波を当てます。すると、血管中のマイクロバブルに超音波が反射して、マイクロバブルがある部分が白っぽく映ります。造影剤を注射してから時間の経過と共に見える像に特徴があるため、その画像を見ることでがんがあるかないか、あればどのあたりにあるのかということがわかります。

では時間によって見える像に特徴があるというのはどういうことなのでしょうか?3つのステップに分けて詳しく説明していきます。

Step1:動脈相の造影

肝臓には肝動脈と門脈(静脈血)の2種類の血管が流れ込んでいます。まず、静脈から注射されたマイクロバブルは心臓へ送られ、心臓から肝動脈を経て肝臓に入ります。この最初の造影画像は動脈相と呼ばれます。

Step2:門脈相の造影

次に、静脈血で全身を循環したマイクロバブルは、門脈から肝臓に再び戻ってきます。この時の造影画像を門脈相と呼びます。

Step3:クッパー相の造影

マイクロバブルは、肝臓に存在するクッパー細胞と言う細胞に異物として取り込まれます。そのため、投与10~30分後には、クッパー細胞内に多数のマイクロバブルが蓄積されます。この時、第3回目の造影(クッパー相)が可能になります。

造影画像の模式図 肝臓にがんができると、がん細胞は増えるための手段として、血液から酸素を得ようと働きかけ、動脈を呼び込みます。その結果、がん病巣部分では動脈だけになります。そのため、がん病巣部分では動脈相と門脈相の映り方が異なってきます。

また、がん病巣部分にはクッパー細胞がいないので、超音波を当てるとクッパー相ではその部分だけ陰性で黒く映ります。

つまり、肝がん病巣部分は動脈相で白く、門脈相とクッパー相では黒く映るため、マイクロバブルによってがん病巣の存在が一層明瞭になるのです。他の血管造影剤でも動脈相と門脈相は観察可能ですが、このマイクロバブルの新しい造影剤を用いるとクッパー相を見ることができるため、診断の確実性を高めることができます。

慢性肝炎肝硬変など原発性肝がんのリスクのある患者さんは、がんが発生していないか定期的に検査することが重要です。そのような患者さんにとっては、この簡便な超音波による診断は、非常に有用であると言えるでしょう。

マイクロバブルの造影剤の特徴

前述のように、新しいマイクロバブルの造影剤を使うとクッパー相をみることができるため、肝がんの診断がより確実になります。では、なぜマイクロバブルはクッパー細胞に取り込まれるのでしょうか。それは、マイクロバブルの周りを覆っているリン脂質という油によって、表面を負に荷電させているためです。このような膜表面の負荷電は“Eat me ! signal” (わたしを食べて!シグナル)と呼ばれています。マイクロバブルの造影剤はこのシグナルをもつように工夫された優れた新世代の超音波造影剤なのです。

造影画像の模式図

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