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みんなの肝臓
【特別編】レバ刺しはもう食べられないの?

2012年7月1日からレバーを刺身で食べることが禁止され、レバ刺し愛好家や焼き肉店に不満の声があがっています。発端は2011年に焼き肉チェーン店で食中毒事件が起こり、5人の犠牲者が出たことです。腸管出血性大腸菌の一種、O157に汚染された生肉を食べたことが原因でした。その後の調査でレバーの内部にまでO157が入り込んでいることがわかり、生食用の肉と同様に表面を削ぎ取って済ませるわけにもいかず、結局全面禁止となりました。

レバ刺しにはO157が入り込んでいるかもしれない

O157はどうしてレバーの内部にまで入り込んでいるのでしょうか?その点について新聞等でも詳しく説明されていないので、処理法を改善すればまたレバ刺しが食べられるのではと期待する方もおられるようです。

肝臓を研究している私たちとしては、レバ刺しはこうすれば安全に食べられますよ、という名案は考え付きません。腸で吸収された栄養素は門脈という血管によって肝臓へ運ばれ代謝されます。同時に門脈は腸内細菌がつくるエンドトキシン(内毒素)という毒素や、時にはO157などの病原菌そのものも肝臓へ運んできます。肝臓の内部は細かい血管(類洞)の網が全体に張り巡らされていて、上流の腸から送られてきた血液はこの網の中を灌流している間に栄養素が吸収され、毒素や異物はマクロファージや樹状細胞によって処理されます。肝臓は腸と直結した臓器で、腸由来のすべてを一緒くたにして取り込んで選別する臓器です。ですからレバーは美味しいものも毒素も共存している食材なのです。

この食材を刺身で食べるために、門脈の切り口から塩素性消毒液を肝臓内へ灌流させて内部を消毒することを研究している人もいると報じられています。しかし、摘出後の肝臓は、少し時間が経つと血管が詰まるために、圧をかけて注入しても満遍なく消毒液を行き渡らせることは難しいのです。レバーの消毒薬漬けは安全な食品としていただけそうにもありません。結局レバ刺し愛好家の方々には諦めていただくほかなさそうです。

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